神官と咎人 呼び声 8






相反する二つのものは一つにはならない。
そんな当たり前のことに気づかず、ジュノウは一つにしようと作業を繰り返していた。
二つ…
    ひとつは「契約だけの関係であること」
    ひとつは「隠し事されて嫌だったということ」

いくら作業を繰り返しても、二つはいつまで経っても二つのままだった。
無理に合わせようとするとゴリゴリといびつな音を立てて、互いをすり減らすだけ。
一つにすることができないなら、片方を改めればよかったのだ。
それにやっと気づいた。


太陽がまだ沈んでいないというのに、月がうっすらと浮かんできた。
青い空に太陽と月がある。 この時間にしか見ることのできない不思議。

ふと気がつくと、ジュノウはパンセのほうを見つめていた。
「わかった。」
何がわかったのか訊かなかった。 ジュノウが、笑っていたから。
「じゃあ …帰る?」
ジュノウは立ち上がってぐいっと体を伸ばす。
「帰ろう。夜になっちまう。」
パンセも立ち上がって砂を払う。冷え始めた風が通り抜けていく。

太陽が追いやられ月が色を濃くしていく。
空は闇に塗り替えられる直前、断末魔のように鮮やかな色を発している。

踏み出すと、足が砂にとられ沈み込む。
ゆっくりゆっくり歩みを進める。
足取りは重くない。
――帰ったらオリハウラに、どんな顔で何を言えばいいんだろうな。
ジュノウは笑いながら考える。

うっすらと家の影が見えてきた。
――なんでもいいや、言いたいことを言ってやろう。




―――――…!

パンセは立ち止まった。
聞こえた、呼び声。
止んでいた呼び声が聞こえた。
1回だけ。

パンセは空を見る。

「パンセ?」
先を行っていたジュノウが気づいて声をかける。

振り向く。
声が聞こえた と言おうとして




そこで途切れた。


その後、どうなったのか。

わからない。


その後のことは、パンセの記憶には無い。



呼び声…END









使用した写真素材はSky Ruins..さまからお借りしました。
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