神官と咎人 呼び声 2



靴底が、床を叩く音がする。
聞きなれた音だ。

実にスムーズにベランダの戸が開く。
ただ静かにその時を待っていようと思ったオリハウラの元に、契約主が現れた。

「オリハウラ」
ジュノウの顔には「意外なところに居た」と言いたげである。

確かに… ベランダから外を眺めているなどオリハウラらしくないことであった。

「パンセを見なかったか?」
端的な物の訪ね方は彼の良いところである。

「見た。」
非常に端的に訪ねられたから、オリハウラもそれに応えた。
これもまたオリハウラらしくない答えだった。
「朝から全然見かけなく…

 …見た?」
「見たぞ。」
「どこへいったんだ?」

わからん といって首をくるりと外へ向ける。
「どこかへ歩いていくのは見たが。」

ジュノウはベランダから乗り出す。
だが、広い沙漠の中に人影を見つけることは出来なかった。
「どっちの方向だ?」
「なぜ探す?」

ジュノウはすぐに次の句が継げなかった。その言葉はあまりにもオリハウラらしくない言葉だったからだ。
眉間にわずかな皺が寄る。
「朝から居ないんじゃ、どこかで迷っているかもしれないじゃないか。」
「それはないだろう。  パンセ嬢は自らの意志で出て行ったのだ。探す必要などない。」


不快。 そう、一言で言ってしまえば不快だった。
オリハウラの言動の違和感がジュノウをひどく不快にさせていた。

「オリハウラ、お前 何か隠しているだろう。」
「お前にか?
 何も隠してなどおらんよ」

ジュノウの眉間の皺が深く刻まれる。
明らかにオリハウラをにらんでいた。


「嘘だ。」
吐き捨てるような口調。
「お前は最近何かを隠そうとしている…。
 この、、俺に対して。」