神官と咎人 呼び声 4



足が…重い…。

パレードの音が聞こえる。
楽しげなのに …どこか不穏な音に聞こえてしまうのはなんでだろう。
重い。

空が割れそうに見える。
そもそも俺はどこへ向かえばいいのだろう。
パンセ… パンセはどこにいったんだ?
重い… 重い…。

砂漠は広い。 どこまで行っても何も得られないような気がした。




―――呼び声が大きくなった気がする。
パンセは振り向いた。

しかも… 私の名前を呼んでいる。
誰…?

今度の呼び声にはちゃんと方向感覚がある。

呼び声のほうへ歩いていく。
なじみの景色が見えてきた。

そしてその景色の中に座り込んでいるジュノウを見つけた。

砂漠の真ん中でジュノウは座り込んでいた。
影もないところで、ひざを抱えていた。
パンセの足音は聞こえているだろうに、顔を上げようともしない。

こんなジュノウははじめてみる。
「ジュノ」
そばによって声をかけたが、ぴくりとも反応しない。
ジュノウの目の前に立ってぼんやりと見下ろす。
―――あ…。
ふと思い出すことがあった。
―――これ… 最初のときとにてる…。
あのときは… そう、パンセが座り込んでいた。
あの場所は…あとで知ったことだけど、マッカの都市だった。

私は何も思い出せなくて、どうしてここにいるのかもわからなくて、
怖くて… 顔を上げず座り込んでいた。
今のジュノウと同じように。

どのくらいそうしていたかわからない。 怖かったんだもの。
周りを見渡す勇気も無かった。
そしたら…
―――水ならあるぞ
声をかけられた。 ジュノウが水を差し出しながらこっちを見てた。
そこではじめて、顔を上げることができた。

あそこで声をかけてくれなかったら… 私あのまま石像になってしまったんじゃないかしら。

あのときの自分と今のジュノウがダブって見える。

「ジュノ」
優しく声をかけた。 あなたも怖いの…?
「喉…渇いた?」
「…いや」
やや間があって、くぐもった声が返ってきた。
「具合、悪いの?」
「…いや、違う」
パンセは隣に座り込んだ。 砂しかないその場所は決してすわり心地がいいとは言えなかった。
風が吹くたび砂が体にあたる。太陽はいくぶんか陰ってきた。

「どうしたの?」
「…パンセを探しに来たんだ。」
どうしてここに座り込んでいるのか と訊いたつもりだったが、意図しない返事がかえってきた。
ジュノウはまだ顔を上げない。
「私…?」
「朝からいなかったから…」
そういえば、ずいぶんと歩き回っていた。
ごめんね とパンセはつぶやく。
「誰かが何かを呼んでいる声が聞こえたから、探してたの。」
いつの間にか声は止んでいた。 呼んでいた誰かは、探し人に会えたのかしら。

「声… か。 パンセには不思議なものが見えたり聞こえたりするんだな…」
「でも、何を呼んでいるかよくわからなかったの」
「そうか…」

じっとパンセはジュノウを見る。 まだ顔を上げない。
「どうしたの?」