神官と咎人 呼び声 7






しばらくの沈黙。 ジュノウが考え事をしているのがわかる。
風が少し止んだ。 太陽は翳ったまま傾いてきた。

パンセは同じようにひざを抱え、次の言葉を待った。
契約、精霊。 この世界には不思議なことがいっぱいある。
ジュノウは私に眼が無いことが不思議だと思っているけれど、私から見れば、二人だって十分不思議な関係だ。
それとも私が元々居た世界でも、"契約"は存在していたのかしら。

…じゃり と砂が動く音がした。
はっとして隣を見ると、ジュノウの表情が変わっていた。
さきほどとは打って変わって、目を見開いて砂漠を凝視している。

声をかけるのは憚られた。
言葉を待つ。

―――なぜ、俺は

            怒っていたんだ?
「なんで俺…」
そこまで口に出してから、ジュノウがぎゅっと口をつぐんだ。
苦い顔になった。 自身で意識しないうちに出てしまった独り言らしい。

パンセは正面を向いたまま「なんでだろうね」とだけ答えた。
「なんでだろうな」
ジュノウは再び深い思考の海へ沈んでいく。


なんでだろうな。
俺たちは人と精霊。 契約を交わした間柄。
それ以上でも、それ以下でもない。

契約さえ守れば、お互いにとって良い という関係。

契約以外のことは期待しない。
契約以外のことはなさない。
契約以外のことは必要ない。

そうだろ?
そういうものだろう?

隠し事?嘘?
それがあったところで、契約に何の支障がでるんだ?
わかっているじゃないか、俺は。
ちゃんとわかっている。
何の支障も無い。

何も…
 

―――嫌だった。
嫌だった。
嫌だったんだ。
すごく。 嫌だった。

『なんでだろうね』

なんでだろうな

『ジュノとオリハウラは仲良しよね』

…そんなはずないさ。 俺とオリハウラはただの…

『仲良しよ』

…そうなのかな…

そうなのかもな…



『友達でしょ?』




「…そうだな。」